エーゲ海に浮かぶ火山の小島がサントリーニ島であり,ギリシャ領となっている。カルデラ地形の海に向かう急峻な崖にへばりつくように白い壁の家々が並び,何ともいえないシーニックな景観を見せてくれる。

 僕らは早朝のまだ暗いアテネからターボプロップの飛行機に搭乗し,サントリーニ島の中程に島最大の町,フィラから車で20分ほど東側の空港に降り立った。空港からバスに乗り,フィラのターミナルで降りると,バスを乗り換え,島の北にある町,イアまで30分くらいの行程である。イアには,サントリーニ島の特徴である,白い壁と青い丸屋根の教会,崖に連なる白い家々がある。早朝でまだあまり人の気配がない中,朝の斜光の中に浮かぶ光景は実に美しい。

 サントリーニ島は,また,アトランティス伝説とも関係がある。この島じたいが阿蘇山のような巨大なカルデラ地形の一部であり,昔,大きな火山活動があった結果できたものである。一説には,噴火により滅んだが,この地にあった古代ミノア文明をアトランティスとするそうだ。伝説によれば,古代にアトランティス大陸があり,そこには文明王国が繁栄したが,世界を軍事的に制覇しようとしたために全能の神ゼウスの怒りに触れ,海中に沈められたという。古代ギリシャの哲学者プラトンがその著書の中で記述している。

 プラトンの著書「ティマイオス」によれば,紀元前9500年頃,ジブラルタル海峡の入口の手前の外洋であるアトラスの海(Atlantic Ocean大西洋)にアトランティスという巨大な島が存在し,大洋を取り巻く彼方の大陸との往来も,彼方の大陸とアトランティス大陸との間に存在する島々を介して可能だった,アトランティスに成立した恐るべき国家は,地中海世界を侵略し,エジプトより西側とイタリアに至るまでのヨーロッパを支配したが,ギリシャ都市国家はアテネを総指揮として団結してアトランティスと戦い,地域を開放し,エジプトを始めとした諸国をアトランティスの脅威から未然に防いだ,しかし,ある日,異常な地震と大洪水が起こり,過酷な一昼夜が訪れ,アテネ勢の戦士全員が大地に呑み込まれ,アトランティス大陸も海に呑み込まれて消えてしまった,とのことである。  

 もちろん,これは伝説に過ぎないが,今も残るカルデラの急峻な崖に建ち,眼前の海をはるか彼方まで望んで立ち並ぶ白い石灰の美しい家並みを風に吹かれながら見ていると,はるか何千年も前の遠い記憶が目の前に漂ってくるような気分になる。






























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